もう少し月が綺麗だったら
月がもう少し綺麗だったら
今日は皆既月食だった
あとから知ったのだが、150年に一度のモノらしい
夜街に出ると、周りの人はみんな空を見上げていた
なんとなくふわふわした、特別な日なんだという空気に包まれた街
促されるように空を見上げると、ちょうど月全体が食われて真っ暗になったタイミングだった。薄く赤みがかった月は、なるほどたしかにいつもと違う姿だった
みんな月を見ていた
キャバクラの呼び込みらしきおねーちゃんも、酔ったサラリーマンの集団も、ホテルから出てきた中年カップルも
みんなが月を見ていた
みんながどこか幸せそうに見えた
僕は月を見るのをやめ、逃げるようにラーメン屋に向かった
就活は始まったばかりだ